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初夏に向けて
日照時間が長くなっていくと、気温もぐんぐんと高くなっていきます。
多くの植物が成長期を迎えるこの季節、お子さんと一緒にベランダ菜園を始めてみませんか?
特別な設備や道具はいっさい必要なし。初心者でも、どんな家でも、失敗なく野菜を育てられる方法を、
『はじめてでもできる! ベランダですずなり野菜』などの著書で知られる園芸家の深町貴子さんに教えていただきました。
ベランダ菜園をすると、子どもにとって以下のような効果があるとよく言われます。
●野菜を育てることで食育につながる
●観察力が養われる
●水やりなどのお世話をすることでお手伝いの習慣がつく
●野菜嫌いを克服できる
●想像力を育み、表情が豊かになる
こうした効果があるのは事実ですが、すべて親目線のメリットです。では、子どもにとって野菜を育てることはどんな体験なのか、私の経験をお話しします。
初めてベランダ菜園をしたのは、まだ子どもが幼かった頃。
当時住んでいたマンションには広いバルコニーがあったものの、全面がコンクリートの殺風景な空間でした。それが寂しくて鉢で野菜を育て始めたところ、ミニトマトの実がすずなりになっているのを見て、子どもが『トマトが笑ってる』と言ったんです。
どうやら子どもはミニトマトのお世話をしているうちに、ミニトマトは生き物であると認識し、育てているというより一緒に暮らしている感覚になったようです。ミニトマトをもっと笑わせようとして、くすぐったりしているのが、おもしろくて楽しくて。
そんなふうに子どもは植物を介していろいろなことを学ぶとともに、想像力を育みます。それがベランダ菜園の最大のメリットで、食育や野菜嫌いの克服うんぬんは、あくまでも副次的な効果。難しく考えずに、まずは子どもと一緒に楽しむ姿勢を大切にしてください。
ベランダ菜園は土とプランター、野菜のタネまたは苗さえあればできます。プランターは市販のものでなくても、後述する手作りグッズで代用できますし、ベランダがないなら屋内の窓際でもOK。日光とほんの少しのスペースがあれば、植物は育ってくれますよ。
◎用意したい道具
・植物のタネまたは苗
・野菜用培養土 (元肥入り)
・プランター (手作りで代用可)
・じょうろ (手作りで代用可)
・鉢底石 (深さ 20cm 未満のプランターには不要)
◎プランターのサイズと置き場所
植物は種類によって根の張り方が違います。
たとえば草丈が高くなるミニトマトや、つる性の植物は深く広く根を張るのが特徴。
狭く小さなプランターでは倒れてしまったり、根が詰まって酸素不足になり枯れてしまうことも。
トマト、ナス、ピーマンといったナス科の植物を育てるには、8号~10号くらい、直径や深さが25cm以上のものがベストです。
一方、夏に収穫したいエダマメは、あまり深く根を張りません。20cm 前後のプランターを用意しましょう。たくさん栽培したいときは面積の広いプランターにするなど、作る野菜に合わせて容器を選ぶようにしましょう。
植物は日光を浴びて光合成をしてエネルギーを作り出す生き物なので、日当たりの良さは必須。ただし、プランターのサイズと同様、直射日光に強いのか弱いのかは植物の種類により異なります。なのでベランダ菜園を始める前に、まずは自分の家のベランダの日当たりを把握したいところです。
屋根のあるベランダは斜めに光が差し込むので、意外と手すり側には光が当たらず、居室に近い側のほうが日当たりが良い傾向があります。いずれにしても周囲の環境や方角、季節、時間によって光の当たり方は変わるので、一度お茶でも飲みながらベランダをぼーっと眺めてみてください。
初心者にも育てやすく、ビジュアル的にも子どもの興味をひきそうなものといえば、ミニトマト、キュウリ、ピーマン。あとはすぐに食べられる葉物野菜、それらとは違った育ち方をする根菜といったふうに、さまざまな野菜を育ててみましょう。
※栽培カレンダーは中間地基準。
●ミニトマト
・苗の植えつけ: 4月下旬~6月中旬
・収穫: 6月下旬~10月下旬
・プランターサイズ: 直径約30cm × 深さ約30cm
夏野菜のイメージがあるトマトですが、原産地はアンデス高原地帯のため、意外にも高温は苦手。栽培のコツは夜の温度を低くすることです。植えつけてしばらくすると勢いよく成長を始めるので、早めに高さ90~120cmのあんどん支柱を立てます。茎は支柱の外周をグルグルとらせん状に誘引しましょう。
●ピーマン
・苗の植えつけ: 5月上旬~6月上旬
・収穫: 5月下旬~11月上旬
・プランターサイズ: 直径約30cm × 深さ約30cm
子どもの好き嫌い改善のため、親目線ではぜひとも育ててみたいピーマン。強い光が当たる場所ほど盛んに光合成ができて、実を多くつけてくれます。苗を植えつけたら株元から3~4cm離して長さ60~90cmの支柱をまっすぐに立て、麻ひもなどで茎を誘引しましょう。実は大きくせずに若採りすると長く収穫を楽しめます。
●キュウリ
・苗の植えつけ: 5月上旬~7月上旬
・収穫: 6月上旬~10月下旬
・プランターサイズ: 直径約30cm × 深さ約30cm
植えつけて30~40日後には収穫を始められるのがうれしいきゅうり。トマトと同様に夏野菜のイメージがありますが、暑さは苦手です。日当たりと風通しのいい場所に置きましょう。
1日の日当たりが7~8時間がベスト。あんどん支柱を立て、つるが伸びたら巻きひげを支柱のリングに絡ませます。根は浅根で傷みやすいので、土の表面にマルチング素材を敷き詰めて根を守ってあげましょう。
●エダマメ
・タネまき: 4月下旬~6月中旬
・収穫: 7月中旬~9月中旬
・プランターサイズ: 直径約35cm × 深さ約20cm
大人も子どもも大好きなエダマメ。約80日前後で収穫できてコンパクトに育つ早生品種がおすすめです。
深さ2~3cmのまき穴を12~13cm間隔で作り、1穴にタネを4粒ずつ、へそを下にしてまきましょう。タネまき直後にたっぷり水をあげれば、その後は発芽まで水やりは必要ありません。双葉が開いたら1穴に2本残して間引きします。
●ラディッシュ
・タネまき: 3月中旬~10月中旬
・収穫: 4月下旬~11月下旬
・プランターサイズ: 幅約20cm×奥行約10cm×深さ約10cm
小さなプランターで育てられるから、初心者にぴったり。タネも大粒で子どもでも扱いやすいラディッシュ。
深さ1cmの溝を5~6cm間隔で2本作り、1cm間隔でタネをまきます。指先で溝の両側の土をつまむようにして土をかけ、軽く押さえてあげましょう。気温が高い時期はタネまきからおよそ20日で収穫できます。
プランターやじょうろなどの基本的な道具は、家にあるものを利用して手作りすることができます。自分で作ったプランターに名前を書き、毎日お世話すれば愛着もひとしお。代表的なものをいくつかご紹介しますので、ぜひお子さんと一緒に作ってみてください。
●牛乳パックプランター
【作り方①】
1Lサイズの牛乳パック(ジュースのパックなどでも可)の注ぎ口をホチキスで留め、横に寝かした状態で底から1cm上の側面に、目打ちやプラスドライバーを使って2cm間隔で排水用の穴を開けます。
【作り方②】
上面に端から1cm内側にマジックで線を引き、ハサミやカッターで切り取ります。開口部はかどをつなげておくことで、土を入れても形が崩れません。
【作り方①】
1Lサイズの牛乳パック(ジュースのパックなどでも可)の注ぎ口をホチキスで留め、横に寝かした状態で底から1cm上の側面に、目打ちやプラスドライバーを使って2cm間隔で排水用の穴を開けます。
【作り方②】
上面に端から1cm内側にマジックで線を引き、ハサミやカッターで切り取ります。開口部はかどをつなげておくことで、土を入れても形が崩れません。
耐水性の塗料で好きな色に塗ったり、紙やシールを貼ったりすると、自分だけのプランター感が出て、お子さんも大事にしてくれますよ。根が深く張らないラディッシュやベビーリーフ栽培などに向いています。
●カップ麺プランター
カップ麺の底(高台を避けた中央)に排水用の穴を開けるだけで、お手軽プランターのできあがり。側面に色を塗ったり、耐水性の紙を巻いたりするとおしゃれに変身します。
●ペットボトルじょうろ
【作り方】
ペットボトルの肩部分に、画びょうを使って小さな穴を6~7個まとめて開ければ完成。水を入れてペットボトルをぎゅっと握れば、水が穴からシャワー状に出ます。
●タネまきスティック
直線の溝を作って、すじ状にタネをまくときに使えるお役立ちグッズ。
厚さ1cm程度の細長い板に、1cm間隔で目印を記入します。側面の下部を1cm幅で黒く塗っておけば、まき溝の深さの目安にもなります。かまぼこ板でも作れますよ。
冒頭で「子どもと一緒に楽しむ姿勢を大切に」と言いましたが、そのために重要なのは、まずは親が楽しむことです。子どもは親が楽しそうにやっていることに興味を持ちますから。
この季節のベランダ菜園で気をつけたいのは、やはり暑さです。
野菜には意外と暑さに弱い種類が少なくありません。
真夏に花がポロポロと落ちてしまい、原因がわからず途方に暮れた経験がある人もいるかもしれませんが、そんなとき野菜は「ここは暑い」「日陰がほしい」と訴えているのです。
何も考えずに毎日ひたすら水やりをするのではなく、植物にとっては暑いのかな? 喉が渇いているかな? など、お子さんと一緒によく観察してから水をあげるようにしましょう。
葉の先端までピンとしていれば水が行き渡っていますが、ぐにゃんとしおれていると「水がほしい」のサイン。
そろそろ水やりのタイミングかなと思ったら、植物がなんと言っているか、お子さんに聞いてみるのもいいですね。
「暑い」「水がほしい」に限らず、植物は本当にいろいろと訴えています。花が咲けば、そのアピールを受け取って蜂やアブなどの虫が受粉を助け、生命が営まれていくのです。植物の声をどうすれば聞けるのか、感じられるのか。それを親子で話し合うのが、ベランダ菜園の醍醐味のひとつではないでしょうか。
深町 貴子/園芸家
有限会社タカ・グリーン・フィールズ専務取締役。
2011年より、NHK「趣味の園芸 やさいの時間」講師を務める。「園芸は育て方より育ち方」をテーマに、テレビや雑誌、YouTube「Horti」、講演などで幅広く活動。集合住宅のコミュニティガーデンとしての菜園指導や、生活を楽しむための園芸講座も行う。著書は『コンテナで育てるハーブと野菜』(西東社)、『プランターひとつで1年中おいしい! 季節の野菜づくり』(PHP研究所)など多数。最新刊『深町貴子のプランター菜園スタートBOOK』(NHK出版)と『失敗しらず! 毎日楽しい! プランターで始める野菜づくり』(KADOKAWA)は発売されたばかり。
タカ・グリーン・フィールズ:
https://taka-greenfields.com/
YouTubeチャンネル 「Horti」:
https://www.youtube.com/@HortiVegelife