mamaomoi mamaomoi

ママのための情報サイト

close

mama知っ得!情報

産後の心を守るために! 産後うつのサインと予防のヒント

掲載日:2025/12/24
PIXTA 89769691

妊娠・出産は、女性にとって大きな変化の連続です。つわりをはじめ、心も体も揺さぶられる十月十日の妊娠期間。ようやく出産という大仕事を終えても、休む間もなく新生児育児の日々が始まります。そうした怒涛の日々の中で、ひっそりと忍び寄ってくるのが「産後うつ」です。産後うつは、ホルモンの変化や環境の変化が重なることで、誰にでも起こりうる心の不調です。

今回は、多くのママ・パパの相談にのっている、周産期メンタルヘルスのエキスパート・齋藤知見先生にお話をうかがいました。産後うつを正しく理解し、早めにサインに気づくことが、ママ自身と赤ちゃんを守ることにつながります。

産後うつは「誰でもなる可能性がある」身近なもの

日本では、およそ10人に1人が産後うつを経験すると言われています。ただ、つらさを抱えながらも、「がんばらなきゃ」「みんなできているから」と我慢を重ね、受診につながらないケースも少なくありません。実際に、専門家のもとを訪れるのは、産後うつに悩む人の約1割と言われています。

産後うつの代表的な症状は、気分の落ち込みと楽しみの喪失です。好きなものを見ても心がときめかない、これまで楽しめていたことに興味が持てない。そうした状態が2週間以上続くと、産後うつの可能性が高まります。

また、「眠れない・すぐに起きてしまう」「涙もろくなる」「理由もなく不安でいっぱいになる」 「家事や育児が手につかない」「食欲がわかない・食べ過ぎてしまう」などの変化が訪れることもあります。こうした症状は、心のバランスが崩れているサインです。

一方、同じく産前産後の心の不調としてよく知られる「マタニティブルー」は、一過性のもの。出産後の数日〜1週間ほど、涙もろくなったり気持ちが不安定になったりしますが、多くの場合はホルモンの変化による自然な揺れで、時間の経過とともに落ち着いていきます。

マタニティブルーは一時的な心の波であるのに対し、産後うつは症状が長引き、日常生活に支障が出るといった点が大きく異なります。「なんだかいつもよりつらい」「気持ちが戻ってこない」と感じたら、早めに相談することが大切です。



赤ちゃんを「かわいい」と思えない…ボンディング障害とは?

産後うつと合わせて、注意が必要な症状に「ボンディング障害」があります。ボンディング障害とは、赤ちゃんに対して「かわいい」「守ってあげたい」といった情緒的な絆(ボンディング)を築くことが難しい状態を指します。産後うつと合わせて発症することも多いのですが、ボンディング障害を合併すると、さらに受診につながりにくくなると言われています。

その背景には、「母親なら自然に母性がわくはず」「赤ちゃんを愛せないなんてありえない」といった母性への思い込みや社会的な期待があります。そのため、自分を責め、また周囲から責められることを恐れて、孤立を深めてしまうケースも少なくありません。

しかし、母性とは、生まれた瞬間に自動的に備わるものではなく、赤ちゃんとの生活の中でゆっくり育っていくものです。「赤ちゃんをかわいいと思えない」「泣き声にイライラする」「抱っこや授乳がつらい」「触られたくないと感じる」といった戸惑いも、初めてづくしの育児に向き合うママにとっては、決して珍しいことではないのです。

ただ、ボンディング障害を放置すると、育児の日々はつらく、困難なものになってしまうこともまた事実です。赤ちゃんにとっても、ママ・パパとの絆=愛着形成は、心身を育てる土台になります。赤ちゃんのためにも、ママのためにも、しんどさを我慢せず、早めに助けを借りましょう。

メンタルヘルスクリニックやカウンセリングを受診するのはもちろん、自治体が実施する保健師・助産師訪問で相談したり、1カ月健診などの機会を利用したりして、産婦人科医・小児科医・助産師に話すのもよいでしょう。周囲のサポートを受けることが、安心して赤ちゃんと向き合うための大切な一歩となります。



産後の心の不調は、夫婦のすれ違いから深まりやすい

産後うつやボンディング障害には、さまざまな要因がからみあっています。パートナーとの関係やサポートの有無、経済的な不安、過去の経験やトラウマ、考え方の癖などが影響していることもあります。

特にパートナーであるパパとの関係性は、ママの心の安定に大きく関わります。産後は心身ともに負担が大きく、ちょっとしたすれ違いや価値観の違いが、ママの孤独感や不安を強めてしまうこともあります。

「私ばかりがんばっている」「わかってもらえない」という気持ちが積み重なることで、心の不調が深刻化してしまうケースも多いのです。ボタンの掛け違いが大きくならないうちに、こまめに話し合い、お互いの考えや気持ちを確認し合うことはとても大切です。

とはいえ、慣れない育児の日々の中では、2人で落ち着いて話し合う時間をつくるのは簡単なことではありません。寝不足や疲れがたまっていると、つい感情的になってしまったり、伝えたいことをうまく言葉にできなかったりすることもあるでしょう。

だからこそ、短い時間でも「今日ちょっとつらかったこと」「助けてもらえたらうれしいこと」など、軽い対話を積み重ねることがポイント。特にパパは「やっているつもり」にならないことが大切! 「何をするとラクになる?」と、ママの気持ちを確かめながら、2人の心地いい育児スタイルを一緒に作っていけるといいですね。



パパの産後うつにも要注意! 家族全体で早めのケアを

うまくコミュニケーションがとれないときは、助産師や保健師、カウンセラーなど、第三者に入ってもらうのも効果的です。客観的な視点で整理してもらうことで、「実は2人とも同じ方向を向いていたんだ!」と気づけることも。誰かに話すだけでも、パッと心が明るくなることもあります。

最近は、ママの産後うつに寄り添ううちに、パパが心の不調を抱えてしまう「パパの産後うつ」も注目されています。ママがつらい状態にあると、パパも睡眠不足や育児負担、仕事との両立などでストレスが高まり、連鎖的に不調を発症することがあるのです。

パートナーのどちらか一方ががんばりすぎないよう、2人で支え合い、早めに相談することが、家族みんなの心の健康を守ることにつながります。



妊娠中からできる「楽しみストック」が産後の助けに

出産後の女性は、誰もがなる可能性のある産後うつ。不調を感じる前から、予防をしておくことが大切です。おすすめは、妊娠中から小さな楽しみをたくさんストックしておくこと。

□香りのいいハーブティーを楽しむ
□漫画やエッセイを読む
□好きな歌やラジオを聴く
□お気に入りのスキンケアでお手入れをする
□ベランダで深呼吸する

など、短い時間で気軽にできて、自分の気持ちが喜ぶものを、いくつか見つけておきましょう。

出産後は思うように時間が使えず、「自分のための時間」はどうしても後回しになりがちです。外食や映画館、旅行、お酒など、これまで好きだったことがなかなかできにくくなる期間でもあります。だからこそ、妊娠中のうちに、“自分がどうしたらほっとするのか”を知っておくことが、産後の心を守る大きな助けになります。

そして、少しでも時間ができたら、自分が喜ぶことにしっかり時間を使うこと。部屋を見渡せば、「掃除しなきゃ!」「洗濯もしてない!」「洗い物も…」と気になることが次々に目に入るかもしれません。でも、家事や育児を完璧にこなそうとする気持ちをいったん横におき、たとえ短い時間でも自分を労わる意識を持つことが大切です。

自分が整うことこそが、赤ちゃんとの時間も、家族との毎日も、心地よく過ごすための土台です。



齋藤 知見 / photo:saito

齋藤 知見(さいとう・ともみ)/母子愛育会 総合母子保健センター 愛育クリニック 周産期メンタルヘルス科副部長

産婦人科医、医学博士。東海大学医学部卒業後、産婦人科医として勤務。臨床だけでなく、研究・教育分野にも携わる。現在は、愛育産後ケア子育てステーションの副所長も兼任し、産後のママと赤ちゃんの支援体制づくりに力を尽くしている。

愛育クリニック:https://www.aiiku.net/clinic/

  • Facebookでシェア
  • Xでシェア
  • LINEでシェア

関連記事 関連記事

pick up pick up