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35歳は“髪の曲がり角”? 毛髪診断士が教える白髪の原因と予防方法

掲載日:2023/11/15


「30代はお肌の曲がり角」とよくいわれますが、30代半ばになると、お肌だけでなく髪にもわかりやすい変化が現れはじめます。その最たるものが、白髪。実際、35歳以上の日本人の2人に1人は白髪があるというデータも存在するのだとか。

エイジングは避けられないとはいえ、できるなら「白髪を見つけて落ち込んだ」なんて経験は少しでも先延ばしにしたいものです。そこで、毛髪診断士の伊熊奈美さんに、白髪の原因や予防方法についてお話をうかがいました。

そもそも白髪になる原因は?

実は、生まれたばかりの髪は無色透明です。なのに黒髪になって生えてくるのは、「メラニン」という色素が髪を黒く色づけるから。メラニンは、日焼けで肌を黒くしたり、シミの要因にもなる体内の色素。色素細胞(メラノサイト)と呼ばれる細胞から供給されますが、そのメラノサイトの大もとになるのが「色素幹細胞」です。毛髪においては、ひとつひとつの毛根に髪そのものをつくる幹細胞とともに存在しています。



この色素幹細胞が機能しなくなったり減少したりすると、メラノサイトも生み出されなくなってメラニンの供給が不足し、白髪になることがわかっています。では、色素幹細胞の機能が衰える原因は何なのでしょうか。加齢や遺伝のほかに以下のようなものがあると考えられています。

●ストレス
ハーバード大学の研究チームが2020年に発表した研究結果で、ストレスを感じると白髪が増えることが科学的に証明されました。ストレスを感じ、交感神経が優位になると放出される神経伝達物質「ノルアドレナリン」によって、毛包にある色素幹細胞が異常に働くことが原因とされています。

●紫外線
紫外線が頭皮に当たると、老化の原因といわれる活性酸素が発生します。すると頭皮が酸化して、色素幹細胞や髪をつくる毛包幹細胞にダメージを負わせます。なぜか分け目に白髪が多いのは、それが理由。また、分け目を中心に薄毛が広がる原因にもなると考えられています。

●血流の悪さ
栄養と酸素をたっぷり含んだ血液を、血流にのせて頭皮の毛細血管まで届けなくてはなりません。しかし、加齢によって血流はどうしても鈍ってきます。冷えや運動不足も伴えば、それがさらに加速。慢性的な肩こりも頭部への血流を妨げます。髪の健康のためにも定期的な運動を取り入れるようにしましょう。

●栄養不足
人間の体は血液によって運ばれた栄養や酸素によって維持されていますが、毛髪も同様です。豊かな血液を作り出すために、特に留意したいのが鉄分。血液の主成分である赤血球(ヘモグロビン)は主に鉄分を材料として生成されるからです。女性の場合、生理によって血液を排出するので、余計に鉄分が必要なのですが、通常の食事ではなかなか補いきれず、貧血気味になりがちです。東洋医学では髪は血余(けつよ)といわれます。血液は生命維持のために大切な臓器などに優先してめぐり、余ったものが髪に行き渡ることを覚えておきましょう。



よく耳にする白髪にまつわる疑問はウソ? 本当?

「白髪は抜くと増える」「強いストレスを感じると短期間で総白髪になる」などなど、巷にあふれる白髪にまつわる言説。その説、本当なの?にお答えします。

Q1. 出産後は白髪が増えるって本当? A. 妊娠・出産が髪に影響を与えることは事実です。出産後は妊娠中のホルモン状態から正常値に戻ろうとします。妊娠すると生理がなくなりますよね。妊娠中は女性ホルモンのエストロゲンが優位になり、髪が抜けにくい状態になるのですが、産後はその状態から体が正常の状態に戻ろうとします。生理が始まり、通常のホルモン状態へと近づいていくと、本来抜けるはずだった髪が抜けていくため、脱毛の印象を強く感じます。白髪は脱毛とは違う機序で起こる現象ですが、髪そのものをつくる毛包幹細胞は色素幹細胞の居場所を保っているため、少なからず影響はあると考えられます。
Q2. 強いストレスを感じると短期間で総白髪になるの? A. マリー・アントワネットが処刑前に一夜で白髪になった説が有名ですが、それはさすがにありません。 仮に強いストレスによって色素幹細胞が機能不全を起こしたとしても、すでに生えている黒髪は細胞分裂を終えているので、いずれは劣化して色素が薄くなっていったとしても、たった一晩で色が変わることはありません。ただ、これから生えてくる髪の色素幹細胞が機能しなくなることはありえると思います。
Q3. 自然と黒髪に戻る白髪もあるの? A. あります。重要なのは色素幹細胞が存在するかどうか、メラノサイトが働いているかどうかです。色素幹細胞やメラノサイトが枯渇してしまっている場合、黒髪に戻るのは望み薄ですが、色素幹細胞はあるのに機能が休止しているだけなら元に戻る可能性があります。特に30代~40代前半で「最近白髪が増えてきたかも」という段階の人は、黒髪を取り戻せる可能性があります。
Q4. 白髪を抜くのはダメなの? A. 抜きたくなる気持ちはよくわかりますが、白髪は抜かないでください。というのも、むしろ抜く=強い力を加えることで炎症の引き金になることや、同じ毛穴を共有しているほかの黒い髪にストレスを与え、新たな髪トラブルの要因になるリスクもあるからです。また、白髪を抜いても、色素幹細胞やメラノサイトが機能不全を起こしている毛包からは、抜いたあとに生えてくる髪もまた白髪という可能性もあります。
Q5. 白髪染めを繰り返すと白髪が増えるの? A. 一般になじみの深い2剤を混ぜるタイプの酸化染毛剤に使われている過酸化水素が気になります。過酸化水素は活性酸素を発生させます。肌でも活性酸素による酸化が老化の原因とされますが、毛髪研究の現場でも、酸化によってマウスが白髪になるという報告があります。繰り返しがちな白髪染めですが、なるべくその頻度を減らし、美容院で染める際には、頭皮にカラー剤をつけない「ゼロテク」という方法を取っている店を選びましょう。



美髪を維持するための3つの対策

先にご紹介した「栄養不足」「紫外線」「血流の悪さ」といった美髪を妨げる要因の数々。これらへの対策をすることで、白髪や薄毛はある程度は予防することができます。以下の3つを日常生活の中で意識することからはじめましょう。

①栄養バランスの取れた食事
肌に良いものは髪にとっても良いので、タンパク質やビタミン類など、美肌効果のあるものを多く摂るようにしましょう。不足しがちで意識したいのは血液をつくる鉄分や、活発な細胞分裂に必要な亜鉛。海藻類をはじめ、食物繊維が豊富で腸を整える食材です。薬膳では、黒ごまなどの黒い食材も白髪予防に効果があるとされています。

②紫外線ケア
夏場は日傘や帽子で物理的に紫外線を避けるのがもっとも効果的です。それができないときは、紫外線を防止するスプレーを頭皮と髪の両方につけるのも効果的です。 ただし、髪につけたスプレーは手で触れれば落ちてしまうので、外出前や髪に触れたあとなど、こまめにつけることを心がけてください。

③血流促進
繰り返しになりますが、血のめぐりは髪の命綱。血流を良くするための運動やマッサージをこまめにするよう心がけましょう。たとえば、1日2回ブラッシングしたり、ていねいにシャンプーしたりするだけでマッサージ効果はあります。



●ブラッシング


頭皮下にある側頭筋・後頭筋・前頭筋を意識してブラッシングを。筋肉の上を走る太い血管の血流が促進され、筋肉のない頭頂部の毛細血管のすみずみにまで血流を行き渡らせるようにイメージしましょう。




●シャンプー


頭皮と髪を1分くらいかけて十分に予洗いします。手のひらに適量のシャンプーを取り、水を加えて手のひら全体にのばし、軽く泡立てたら、皮脂の出やすい頭皮のTゾーンの数カ所にシャンプーを置いていきます。髪をかき分けて、頭皮に置くことが大切です。
泡を置いたら、左右の耳上から両手を差し入れ、頭皮ごと動かすようにして洗っていきましょう。手のひらで頭を包み込み、Tゾーンの縦ラインで両方の指を出合わせて、挟み撃ちにするイメージです。指先でギザギザを描きながら手を動かすのもおすすめ。頭頂付近は指の腹で頭皮を左右から寄せるようにして優しくもみ洗い。すすぎはシャワーを近づけてしっかりお湯を通し、泡と汚れをきれいに洗い流すようにしてください。



身も心も健やかでいれば白髪は怖くない!

白髪予防という観点では、特別なケアをするより、ストレスを避ける、規則正しい生活を送る、バランスの取れた食事をする、きちんとシャンプーする、といったことの積み重ねが大切です。
あえて投資すべきものを挙げるとすれば、ヘアドライヤーでしょうか。大風量・低温度の高機能なドライヤーは値が張りますが、髪と頭皮の乾燥を防ぎ、ダメージリスクを確実に軽減してくれます。家族が毎日使うものなので、ほかの美容家電に比べればコスパがいいですし、小さなお子さんのいるママのQOL(生活の質)も上がります。少し奮発してでも高品質の製品を選ぶことをおすすめします。

もし白髪が出てきてしまったとしても、白髪率が低いうちは、染めずともヘアカラートリートメントなどで凌ぐこともできますし、美容院で白髪を生かすハイライトで白髪を目立ちにくくしつつ、おしゃれを楽しむという方法もあります。 また、最近は白髪を黒髪に戻す効果が期待できるサプリや頭皮用美容液の研究・開発も進んでいます。

今は昔に比べて選択肢が格段に増えているので、必要以上に白髪を恐れずに、身も心も健やかでいることが、結局のところ、もっとも効果的な予防方法なのかもしれません。



mamaomoi 伊熊 奈美

伊熊 奈美/美容ジャーナリスト、毛髪診断士 認定指導講師

20年以上に渡り、雑誌を中心に美容分野の記事を編集、執筆、監修する。特に頭皮ケアとヘアケアに精通。現代の毛髪科学とスキンケア理論に基づいた知見と情報を、生活に取り入れやすく提案する。さまざまな媒体で情報を発信するほか、講演活動も行う。
著書に『頭皮がしみる、かゆいは危険信号! いい白髪ケア、やばい白髪ケア』(小学館)、『脱白髪染めのはじめかた ~でもいきなりグレイヘアは無理!』(グラフィック社)がある。

Instagram:@namiikuma_hairista

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