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暑い時期になると気になるのが「日焼け対策」です。気象庁によると紫外線量は年々増加傾向にあるそう。紫外線を大量に浴びると、肌がダメージを受けてシミやシワの原因になるといわれていますが、肌が敏感になりがちな赤ちゃんや小さな子どもならなおのこと。紫外線量が多くなるこれからの時期は、しっかりと日焼け対策をする必要があります。
しかしながら、「赤ちゃんに日焼け止めを塗っても大丈夫?」「日焼け対策は1年中しないとダメ?」など、日焼け対策に不安や疑問を感じているママ・パパもいらっしゃることでしょう。そこで今回は、小児科専門医の森戸やすみ先生に、赤ちゃんの日焼け対策のポイントについて解説していただきました。
紫外線の影響で肌がダメージを受けると、炎症を起こして赤くなったり、ヒリヒリと痛くなったり、色素沈着を起こしたりします。これがいわゆる「日焼け」です。赤ちゃんの場合、大人よりも皮膚がやわらかく弱いので日焼けしやすく、なおかつ肌へのダメージも大きくなりがちです。
また、紫外線によって細胞を構成している成分が化学変化を起こすと、免疫が低下し、感染症が起こるケースもあります。さらに深刻な場合、DNAが損傷して皮膚がんを招く可能性も。だからこそ、赤ちゃんであっても紫外線対策は必要です。
ただし、だからといって紫外線をまったく浴びないのもよくありません。赤ちゃんや成長期の子どもにとって、カルシウムやリンといったミネラルの吸収率を高めるビタミンDは、とても大事な栄養素。そして、そのビタミンDには「紫外線があたることによって、体内で生成される」という特性があります。
つまり、紫外線を恐れるあまり日光にまったくあたらない生活をしてしまうと、ビタミンDが十分につくられず、カルシウムの吸収が滞って、骨の形成や骨密度に悪影響が出る可能性があるのです。
生後6カ月未満のお子さんは、直射日光に長時間あたらないほうがいいので気をつけましょう。生後6カ月を過ぎたら、紫外線量が多く気温の高い時間帯を避けつつ、少しずつ日光にあたるようにしてください。
その際の日焼け対策として、「日焼け止めを使っていいか?」が気になる方もいると思います。日焼け止めを使うのであれば、やはり生後6カ月以降を目安にするといいでしょう。アメリカ食品医薬品局(FDA)とアメリカの学会は、日焼け止めは生後6カ月からを推奨しています。
国立環境研究所は、4月から9月の晴れた日は、正午を挟んだ2~3時間 は紫外線を浴びすぎないよう注意する必要があると発表しています。
したがって、4月から9月の午前9時から午後3時の時間帯に屋外で活動する場合は、服や帽子で紫外線をカットし、肌が露出している部分には日焼け止めを塗るなどして、紫外線対策を行うようにしましょう。
とはいえ、上記の時期と時間帯は、赤ちゃんや小さなお子さんの屋外活動はできるだけ控えることをおすすめします。日焼けだけでなく、熱中症のリスクも高いからです。
一方、冬に短時間屋外で活動するような場合は、紫外線対策にそれほど神経質になる必要はありません。
日焼け止めを選ぶ際は、次の3つのポイントをチェックしましょう。
◎ポイント1:まずは成分表示を確認
日焼け止めに使われている成分は、主に紫外線吸収剤と紫外線散乱剤の2種類で、成分表に「メトキシケイヒ酸オクチル」「ジメチルPABAオクチル」などと書かれていれば、その製品には紫外線吸収剤が配合されていることを意味します。
紫外線吸収剤が多く配合されている日焼け止めは、肌に塗ったときに白くなりにくく、使い勝手がいいのですが、敏感肌の人は肌に合わない場合があります。赤ちゃんや小さなお子さんは皮膚が薄く、大人よりもかぶれやすいので、紫外線吸収剤ではなく紫外線散乱剤の製品を選ぶといいでしょう。
なお、紫外線散乱剤がメインかどうかは、成分表示を見ればわかります。「酸化亜鉛」あるいは「酸化チタン」が主成分であれば、それは紫外線散乱剤がメインの製品だと判断できます。また、紫外線散乱剤がメインの製品は、パッケージにノンケミカルと表示されていることもあります。
◎ポイント2:SPF・PA値もチェックしましょう
日焼け止めの強さは、SPF、PA値ともに高ければ高いほどいいというわけではありません。
値が高ければその分、肌への負担も増えてしまいます。
日常生活用であればSPFは「15~30」、海や山など紫外線が強いところに行くときは「20~40」、PA値はどちらの場合も「++~+++」で十分でしょう。
◎ポイント3:“赤ちゃん用”でも成分チェックを忘れずに
“赤ちゃん用”とうたっている日焼け止めのなかにも、紫外線吸収剤が配合されているものがあります。成分表示を確認して、紫外線吸収剤不使用の日焼け止めを選ぶようにしましょう。お子さんによっては、ベタベタするタイプの日焼け止めを嫌がるかもしれませんが、その場合は、塗り伸ばしやすく、ベタベタしにくいジェルタイプか、泡タイプの製品を試してみてください。
続いては、日焼け止めの効果的な使い方について説明します。
◎塗り方
顔や首、手など、服や帽子のつばから出て日光にあたる部分にまんべんなく塗りましょう。海や川、プールで遊ぶ際は、ウォータープルーフタイプがおすすめ。汗をかいたり、服についたりしてしまうと日焼け止めが落ちてしまうので、2~3時間おきに塗り直すことも大切です。塗る量については、各製品の使用法を参考にしてください。
◎落とし方
ほとんどの日焼け止めが、お湯・石けん・クレンジングのいずれかを使った落とし方を推奨しています。
基本的には各製品の使用法にしたがって落としてください。ただし、石けんやボディソープを使うと必要な皮脂まで洗い流してしまうため、入浴後は保湿剤を塗りましょう。
紫外線対策は日焼け止めだけに頼らず、服や帽子を上手に活用することが大切です。夏場なら、あせも対策も兼ねて、七分袖で通気性がよいトップスがおすすめ。色は紫外線を吸収しにくい白や薄い色がベターです。
ボトムスはひざまで覆う長さで、少しゆとりのあるものがいいでしょう。服で隠れるパーツには日焼け止めは塗らなくても大丈夫です。なお、ベビーカーに乗せる場合は、サンシェードも利用してください。
帽子はつばの長さによって、顔の正面が浴びる紫外線量が異なります。国立環境研究所の資料によると、つばの長さが5cmなら50%、7cmなら60%ほど紫外線をカットできます。そのため、帽子はつばが長めのものを選ぶといいでしょう。さらに、ネックガードがついているタイプを選べば、首のうしろの日焼けも防げて便利です。
紫外線に気をつけていても、日焼けをしてしまうことがあるかもしれません。ママ・パパも経験があると思いますが、日焼けをすると肌が軽いやけど状態になり、ヒリヒリとした痛みを感じます。
そんなときはまず、冷やすことが大切です。保冷剤をタオルで包んで日焼けした部位を冷やすか、あるいは、ぬるいお風呂に入れてあげるといいでしょう。その後、しっかりと保湿します。
ただし、日焼けした肌に水疱ができたり、痛みがひどすぎたりする場合は、一度、皮膚科を受診することをおすすめします。お日さまと上手につき合って、楽しい夏を過ごしてくださいね。
森戸 やすみ/小児科医
一般小児科、NICU勤務を経て、2020年より、東京都台東区谷中に「どうかん山こどもクリニック」を開院。
『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』(内外出版社)をはじめ、著書・監修本多数。
どうかん山こどもクリニック:
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