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子どもの視力が年々悪化している――。みなさんの中にも、そんなニュースを見聞きしたことがある方がいらっしゃるのではないでしょうか? でも……。
一体なぜ、近視の子どもが増えているのでしょう? また、近視を予防するためにはどうすればいいのでしょう?
今回は、子どもの近視に詳しい東京医科歯科大学の五十嵐多恵先生に、子どもの近視に関するお話をうかがいました。
2019年12月に発表された 「平成30年度学校保健統計調査」(文部科学省) によると、
「裸眼視力が 1.0未満の者」の割合は、幼稚園 26.68%、小学校 34.10%、中学校 56.04%、高等学校 67.23% でした。
では、この数値を昭和54年度の同調査と比べてみましょう。
昭和54年度における「裸眼視力が 1.0未満の者」の割合は、幼稚園が 16.47%、小学校が 17.91%。
幼稚園、小学校ともに、この30年でかなり増えていることがわかります。さらに、五十嵐先生によると、近視になる年齢は次第に低下しているそう。
「ひと昔前までは、中学生くらいから近視が進行する子どもがほとんどでした。けれど今は、就学前に近視が進行し、小学校に上がる頃にはメガネをかけ始めるお子さんも少なくありません」
ではなぜ、近年は子どもの近視が増えているのでしょうか。その理由を説明する前に、まずは、近視についておさらいしておきましょう。
眼球の前後の長さを「眼軸長」といい、正常な眼軸は直径 23〜24mm 程度。
眼軸が正常であれば、外から入った光はちょうど網膜上でピントが合うようになっています。
しかし、眼軸が前後に長く伸びてしまうとピントが網膜より前で合ってしまい、「近くは見えるのに、遠くは見えにくい」状態に! これが一般的な「近視」のメカニズムです。
近視の多くは、遺伝や環境が要因で起こりますが、特に影響が大きいのが「環境」です。
「たとえば、屋内で過ごす時間が長く、文字や映像などを至近距離で長時間見続けると、その状態でピントが合うように眼軸が伸びてしまいます。その結果、近視が進行するものと考えられています」と五十嵐先生。
なお、スマートフォン(以下、スマホ)やタブレット、ポータブルゲーム機などの使用が近視の原因であることを立証した研究はまだないそうですが、
だからといって油断は禁物です。
「スマホやタブレット、ポータブルゲーム機は文字や映像が小さく、近距離で光が目に入るため、目に大きな負担がかかります。近視の子どもが近年急激に増加していることを考えれば、各種デバイスやポータブルゲーム機の使用が、近視の一因である可能性は十分に考えられます」
近視はスタートする年齢が早ければ早いほど、進行も早くなることがわかっています。
また、近視になってしまえば、進行は 17〜18歳くらいまで止まりません。
だからこそ、小さい頃から近視にならないように、気をつけることが大切です。
五十嵐先生に教えてもらった「近視を予防するポイント」を下にまとめましたので、さっそく取り組んでみてください。
《近視予防 5つのポイント》
① 本やスマホの画面は目から30cm 以上離して見る
② 本やスマホの画面など近くを見続ける作業をする際は、適度な明るさを保つ (200ルクス以上)
③ 本やスマホの画面など近くを見続ける作業は、1回あたり30分以内とする。
また、30分に1回、6m くらい先の景色を見るなどして目を5分ほど休める
④ ゲームやスマホの画面など近くを見続ける作業は、1日1時間以内にする
⑤ なるべく屋外での活動時間を増やす。目標は1日に2時間以上
ちなみに、5つの項目のうち、特に効果があるとされているのが、⑤ の1日2時間以上の屋外活動 なのだそう。
「太陽光を浴びるとドーパミンという神経伝達物質の分泌が促進され、それが近視抑制につながると考えられています。
台湾の小学校では、子どもの視力低下を予防するプログラムの一環として屋外活動が導入されているのですが、1日に2時間ほど屋外で活動させたところ、視力の低い小学生の割合が減ったという報告があります」
帽子をかぶり、サングラスをかけた状態であっても、室内にとどまることにくらべれば近視抑制効果は十分にあるそう。気温が高い日は、熱中症や紫外線の対策をしてから、外遊びを楽しんでくださいね。
もし、近視になっていたとしても、子どもは視力が悪いことをなかなか自覚できません。
お子さんが下記のいずれかに当てはまるようであれば、すでに視力が下がっている可能性も……。
一度、眼科で視力検査をしてもらうといいでしょう。
・3歳児健診や就学時健診の視力検査で0.7未満といわれた
・テレビを見る距離が近い
・遠くを見るときに目を細めている
・本やスマホの画面を見るとき、目との距離が30㎝以下になりがち
・屋外で遊ぶよりも、室内で遊ぶ時間のほうが長い
・黒板の文字が見えにくいようだ
最後に、「子どもが近視だとわかった場合、どうしたらいいのか」についても、五十嵐先生にアドバイスをいただきました。
「眼科で診療を受け、メガネが必要かどうか相談してください。メガネが必要だと判断されたら、眼科医にメガネ処方箋を交付してもらい、処方箋をもとにメガネ店でメガネをつくりましょう。子どもの近視は進行が早いので、3〜6カ月に一度は度数が合っているかどうか検査することも大切です」
小さい頃からメガネをかけさせるのは気の毒だと思う方もいるかもしれませんが、そんな風に考える必要はありません。
「近視になっているのであれば、メガネをかけたほうがお子さんのQOL(生活の質)が上がります。また、視力に合ったメガネをかけたほうが、近視が進みにくいとされています」とは五十嵐先生の言葉です。
10月10日 は目の愛護デー。この機会に、お子さんの“目の健康”についてしっかりと見直してみてはいかがでしょうか。
五十嵐 多恵
東京医科歯科大学 医学部附属病院 診療科 感覚・皮膚・運動機能診療部門 眼科 医学部内講師
東京医科歯科大学の眼科学教室にて外来診療を担当するかたわら、子どもの視力低下や、近視の進行予防についての研究を行っている。