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11月8日は「いい歯の日」。「いい歯」を保つためには、子どものころから歯みがきの習慣をつけることが大切です。
でも、「歯みがきはいつからはじめればいいの?」「子どもが歯みがきを嫌がってしまう」など、子どもの歯みがきについて悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、乳幼児の歯みがきについて、ライオン株式会社のオーラルケアマイスター・平野正徳さんに教えていただきました。
乳歯が生えてきたら、歯みがきのはじめどきです。歯みがきでむし歯の原因となる歯垢(プラーク)を取り除いて、しっかりとむし歯を予防しましょう。
「乳歯はいずれ永久歯に生え替わるのだから、ていねいに歯みがきしても無駄なのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、
「食べたらみがく」習慣を早い時期から身につけさせることが大切です。
まずは1日1回以上、特に就寝前には保護者がしっかりとみがいてあげましょう。
乳幼児の歯みがきには2種類あります。保護者が子どもの歯をみがく「仕上げみがき」と、子どもが自分の歯をみがく「自分みがき」です。
子どもの成長に合わせた「仕上げみがき」と「自分みがき」のステップを下記の表にまとめましたので、参考にしてください。
なお、出生〜8ヵ月くらいまでの乳歯が生えるまでの期間は、歯みがきの準備期間です。子どもの頬を手のひらでさわる、清潔な指で唇のまわりや歯ぐきに軽く触れる、口の中を観察するなど、お口まわりのスキンシップをしましょう。
そうすることで、いざ歯みがきをはじめるときに、子どもが口のまわりをさわられたり、歯ブラシを口の中に入れられたりするのを嫌がらないようになります。
ここでは、仕上げみがきのやり方や、ポイントを紹介します。
1. 子どもをひざの上に寝かせる
保護者は床に正座をし、子どもをあお向けに寝かせたら、子どもの頭を太ももに乗せます(子どもの頭頂部が保護者のお腹側にくるようにしてください)。
3歳くらいになったら、子どもを立たせ、保護者がその横にひざ立ちになって仕上げみがきをするといいでしょう。
2. 歯ブラシをペングリップで持つ
歯ブラシの持ち方は、力のコントロールがしやすいペングリップ (図1) がおすすめです。
3. 歯の面に毛先をきちんとあて小刻みに動かす
歯ブラシの毛先を歯の面にきちんとあて、細かく振動させるように1〜2歯ずつみがいてください。
その際、力の入れすぎに注意して、毛先が広がらない程度の力加減で行いましょう。
4. 上唇小帯を指でガードする
上唇の裏側にある筋を「上唇小帯」といい、この部分に歯ブラシがあたると子どもが痛がります。
上の歯をみがくときは、歯ブラシを持っていないほうの手で上唇を持ち上げ、上唇小帯を指でガードしてあげましょう (図2) 。
5. 「イー」の口と「アー」の口で!
奥歯の頬側と前歯の唇側をみがくときは、子どもの口を「イー」、下の歯の舌側をみがくときは「アー」の口にさせるのがコツ。
こうすると歯ブラシがあてやすく、楽にみがけます。
6. 仕上げみがきには専用の歯ブラシを使用
仕上げみがきのときは、専用の歯ブラシを使うのがおすすめ。
仕上げみがき専用の歯ブラシは、ブラシ部分がコンパクトに、ハンドル部分が長く設計されているため、子どもの口の中でも操作しやすく、しっかりとみがくことができます。
乳歯が生えそろう3歳以降には、歯と歯の間がくっついてきます。ここは歯垢がたまりやすい部分なので、上の前歯の外側、奥歯のかみ合わせに加えて、歯と歯の間もきちんとみがいてください。
みがき残しが気になる場合は、デンタルフロスを使うのもいいでしょう。
ここでは、自分みがきのやり方や、ポイントを紹介します。
1. 歯ブラシの持ち方は「こんにちは」と「さようなら」
歯ブラシには、毛先が手前になる「こんにちは」と、毛先が向こうになる「さようなら」の持ち方があります (図3)。
「歯ブラシさんと、あいさつしようね!」など、子どもが覚えやすい教え方を工夫してみてください。
2. みがく順番を教える
図4は、歯をみがく順番の例を示しています(右利きの場合)。
青い部分は「さようなら」の持ち方、緑の部分を「こんにちは」の持ち方にすると、歯ブラシの毛先をきちんと歯にあてやすくなります。
みがく順番は次のとおり。
①・② 「さようなら」 で上の奥歯のかみ合わせ
③・④ 「こんにちは」 で下の奥歯のかみ合わせ
⑤・⑥ 「こんにちは」 で上の歯の左側〜前歯
⑦・⑧ 「こんにちは」 で下の歯の左側〜前歯
⑨・⑩ 「さようなら」 で上下の歯の右側
歯の内側をみがくのはむずかしいので、かみ合わせと外側をマスターしてから練習するといいでしょう。
ここでは、歯ブラシ選びのポイントを紹介します。
仕上げみがき用と自分みがき用では、選ぶポイントが違ってきます。 成長に合わせた歯ブラシの選び方を下にまとめましたので、購入する際の参考にしてください。
子どもが歯ブラシをくわえたまま走り回って転んでしまった…といった事態も考えられるため、持ち手部分が曲がって折れにくいなど、安全性に配慮した歯ブラシを選ぶのもポイントのひとつ。
曲がることで、子どもが歯みがき中に転倒するなど、万が一の場合にも口への負担が軽減されます。
では、最後に子どもの歯みがきに関する“素朴な疑問”にお答えしましょう!
●歯みがきを嫌がったときはどうしたらいい?
無理やり歯みがきをするのは考えもの。
子どもが「歯みがき嫌い」になってしまうかもしれません。
とはいえ、放っておいてむし歯になったら困ります。
むし歯になりやすい部分(上の前歯の外側、奥歯のかみ合わせ、歯と歯の間)を重点的にみがいて、手早く終わらせてあげましょう。
●歯みがき粉はいる? いらない?
歯みがき粉を使うことで、効率よく歯垢を除去できます。
また、フッ素入りの歯みがき粉にはむし歯を予防する効果もあります。
お水を「ペッ」と吐き出せるようになったら、歯みがき粉を使うようにしましょう。
近年は、子ども用にいろいろな香味の歯みがき粉が売られているので、それらを上手に活用するのも歯みがきを“楽しい習慣”にするためのコツ。
「今日は何味にしようか?」と声をかけてあげれば、自発的に歯をみがくようになるかもしれません。
ただし、香味がついているからといって、飲み込んではダメ。注意して見守りましょう。
●小児歯科は普通の歯科医院とどう違うの?
小児歯科は、子どもたちを中心に予防や保健指導、治療を行う歯医者さん。
待合室や診療室の雰囲気から、治療のための器具まで、子どものことを考えた設計になっています。
また、専門の知識と技術を持ったスタッフがいるので、歯医者に慣れていない子どもでも安心です。
むし歯などの治療だけでなく、予防のためにも定期的に受診するといいでしょう。
丈夫で健康な歯は一生ものの財産。仕上げみがきから自分みがきへと徐々にシフトしながら、「食べたらみがく」習慣を身につけさせましょう。
平野 正徳
ライオン株式会社オーラルケアマイスター、博士(学術)、健康予防管理専門士。
オーラルケア関連の基礎研究ならびに開発研究に20年以上携わってきた知識と経験を活かし、歯とお口の健康に関する情報を伝えている。