mama知っ得!情報
保育園のクラスや街中で、私たちの頬をゆるませてくれる双子ちゃんたち。よく似た顔をして、おそろいの服を着ている2人が戯れている姿は、なんとも愛らしいものです。けれども、実際に自分が双子を授かるとなるとどうでしょうか。「1人を育てるより2倍大変」「だけど幸せも2倍」などなど、いろいろな噂を耳にしますが、本当のところは…?
現在は小学生の男女の双子を育てるママであり、Instagramや書籍で双子育児についての情報発信を行っている あやかさん に、自らの妊娠・育児の経験を赤裸々に語っていただきました。
──双子の妊娠がわかったときの率直な感想と周囲の反応を教えてください。
結婚して2年が経ち、そろそろ子どもがほしいと思っていたタイミングでの妊娠でした。誰しも双子を授かる可能性があることはわかっていたので、「もしそうなったらおもしろそうだな」くらいに考えたことはありましたが、実際にクリニックのエコー画面で2つ並んだ胎嚢を見たときは驚きました。なんだか夢を見ているような、どこか他人事のような感覚でしたね。
そのとき、クリニックに同行してくれていた夫は肯定的で、「楽しそうだね」と。その後、会社に双子の妊娠を告げたときもすごく驚かれました。そもそも圧倒的に女性の少ない職場ということもあり、社員が双子を妊娠するケースはほとんど前例がなかったそうです。なぜか同僚たちが自分の妻や知人、友人などの双子育児情報を熱心に教えてくれるようになりました(笑)。
──当時は正社員としてフルタイム勤務されていたのですよね。多胎妊娠の場合、産休や育休などの待遇が単胎妊娠とは異なるのでしょうか?
多胎妊娠は出産予定日の14週間前から産休をとることができます。単胎妊娠だと6週間前ですから、8週も早いことになりますね。これは会社の制度ではなく労働基準法で定められていることで、私も妊娠初期は「早く産休に入れるなんてラッキー」と思っていたんです。けれども、実際にはラッキーだなんてとんでもない! 産休に入る直前の時点で2人の赤ちゃんの合計体重は2kgを超え、体がかなりつらく、日常の業務もままならない状態に。体感としては14週間前からでも遅かったです。妊婦の状態によって産休時期が選べたらいいのに…と今は思っています。
──妊娠中、具体的にはどんなつらさがありましたか?
私の場合、幸いなことにつわりはそれほどきつくなかったんです。軽い食べづわりはあったものの、こんにゃくゼリーがあれば耐えられる程度で、吐くこともありませんでした。それよりもつらかったのは貧血ですね。とにかく立ちくらみがひどく、食後は消化のために血液がお腹に集まるからか、目が回って立ち上がれなかったほど。歩いていても平衡感覚がおかしくなり、段差などを踏み外して倒れそうになったこともあります。
あとはやっぱり妊娠後期の体重増ですね。お腹のなかの子どもが単胎妊娠の2倍大きくなるので、日に日に動けなくなっていく感じがすごく大変でした。
それから妊娠性痒疹にも出産直前まで悩まされました。最初はお腹に小さな湿疹がポツポツと出ている程度だったのが、だんだんと悪化し、ついにはお腹全体に湿疹が広がって真っ赤に。その後、切迫早産で入院することになるのですが、入院中の点滴で痒疹が悪化し、全身に湿疹ができて薬疹のようになりました。全身がかゆいのは本当につらかったですが、出産したら嘘のように症状はなくなりました。
――当時を振り返って、これだけは事前にやっておいたほうがいいと思うことがあれば教えてください。
いちばん重要なのは「育児は2人でする」という価値観を事前にパートナーと共有しておくことです。夫には「赤ちゃんたちが生まれてきた瞬間から、1人はあなたがお世話するんだよ」と事あるごとに伝えていましたし、家事は妊娠中からやってもらうようにしていました。
ファミリーサポートなど、出産後に必要になるであろう公的なサービスにも、できれば事前に登録しておきたいですね。登録まではしなくても、話を聞いたり、資料を取り寄せたりしておく。自治体によっては多胎家庭に特化したサービスを行っていることもあるので、それがあるかないか確認することも大事です。
多胎妊娠は出産のための入院期間が長かったりして医療費がかさむこともあるので、健康保険の自己負担額が一定の金額を超えた場合に超過分を払い戻せる「高額療養費」などのことも調べておいたほうがいいと思います。
──多胎出産は帝王切開が多いそうですが、あやかさんの場合は?
結果的に帝王切開になりましたが、もともと経膣分娩か帝王切開かを選べる条件がそろっていたので、経膣分娩を希望していたんです。理由はお腹を切るのが怖かったから(笑)。ところがいざ入院して出産に備えても陣痛が起こらず、誘発剤を3度使ったところで経膣分娩を断念。医師の判断で緊急帝王切開となりました。
出産時は部分麻酔だったので意識はあり、子どもが生まれるたびに顔の近くに連れてきてくれたことをよく覚えています。1人目が息子で、2人目が娘。娘が私の指をぎゅっと握ってくれた瞬間、「こんなことがあるのか」と、なんとも言えない喜びを感じました。
──そうした出産直後の怒涛の日々を乗り切るための秘訣はありますか?
がんばりすぎないことだと思います。私も最初は完璧にやらなくてはと意気込み、たとえばお風呂もがんばって毎日沐浴させていたんです。だけど、あまりにもしんどくてやめました。シャワーだけで済ませたり、お風呂は隔日にしたり、夫の帰宅が遅い日は子どもの体を拭いてあげるだけで済ませたりしました。
離乳食も最初は自治体の離乳食教室に通ってていねいに手作りしていましたが、双子が3回食になってからは追いつかなくなって、病んでしまって。このままでは心身ともにもたないと思ったので、ベビーフードや粉末野菜を使うようにしたんですね。それでも2人同時に食べさせるのは大変でしたが、以前に比べるとずいぶん楽になりました。そうして手を抜いてもまったく問題ないことがわかったので、3人目は最初からがんばりすぎないことを心がけました。
──最初の数年を振り返って、もっとも大変だった時期は?
2つあって、最初は生後半年から1歳にかけての時期でした。出産直後から無我夢中で双子を育て、だんだんリズムができてきたと思ったら、生後半年で離乳食をはじめたときに授乳のリズムが崩れ、お昼寝してくれなくなったんです。ちょうどハイハイして動きはじめる時期でもあったので、あらゆることに神経を使っていたのも疲れました。
次は双子が2歳になった頃の、いわゆるイヤイヤ期ですね。双子がどちらも自分の意見を主張し、譲らないのがとにかく大変でした。たとえば外出先から帰ってきたときに、息子が「鍵を開けたい」と言うと、娘が同じことを主張して鍵を奪うんです。同じケースでも子どもが1人だったら「開けてくれる?」って鍵を渡すだけで済むのに、双子だと鍵の奪い合いになってしまって、家に入るまでに30分もかかったり。
──本当につらいとき、周囲に助けを求めたりはしましたか?
もちろんしました。夫にも頼りましたし、自治体の「子育てひろば」にもずいぶん助けられました。スタッフの方々が元気づけてくださって、双子ともたくさん遊んでくださって。少しでも子どもから目が離せる時間ができたのは大きかったと思います。あと、双子サークルへ行くようになって、双子のママさんたちと情報交換できたのも励みになりました。
──双子育児は大変なことが多いぶん、大きな喜びを感じることもあるのではと想像します。双子を育てることの喜びや楽しみは?
双子たちが一緒に遊んで楽しそうにしているのを見ると、やっぱり2人産んでよかったなと思います。双子たちが幸せそうにしているとこちらも幸せな気分になりますね。
──その後、Instagramなどで双子育児に関する情報発信をするようになったのはなぜでしょうか?
理由は2つあって、1つは自分のキャリアパスの変化です。双子を出産後、1年4カ月で職場に復帰したのですが、双子の育児と両立しようとするなかで、それまで思い描いていたキャリアパスを変更せざるをえなくなったんですね。
その傾向は第3子の出産後より顕著になり、体力的に限界だったこともあって、会社を辞めてフリーランスとして働こうと決めました。フリーランスになって仕事をするとして、今の自分にできることは何か。そう考えたとき、当時は24時間育児のことで頭がいっぱいだったので、育児の情報を発信して仕事につながればベストだな、と。
もう1つの理由は、自分自身が双子の妊娠・出産を経験するなかで、情報の少なさを痛感していたことです。双子の出生率を考えれば仕方のないことですが、世の中に出回っている育児情報の大半が1人用で、双子用の情報って本当に少ないんですね。むしろ1人の育児よりも煩雑な双子育児の情報を増やして、私の後続の人たちには少しでも楽に育児してもらいたい。そんな思いで情報発信をはじめたところもあります。
──ちなみに第3子が生まれて、家庭にどんな変化がありました?
双子の反応は意外と薄かったです。第3子が生まれた当時、双子は2歳7カ月だったので、妹という存在に対して特別な感情はなかったようです。「なんか出てきた」くらいに思っていたんじゃないでしょうか(笑)。
親からすると、3人目はひたすらかわいいです。双子のあとの1人育児だから「片手間でお世話できるぜ」くらいの感覚で、3人目の育児だけを見るとボーナスタイムみたいなものです。3人の子どもを育てているという意味では大変ですが、夫と協力してなんとか家庭を回している感じですね。
──最後に、現在、双子を妊娠中のママ、あるいは育児中のママ・パパにメッセージをいただけますでしょうか。
今日は大変だったエピソードばかりお話ししてしまいましたが、実際に双子の出産・育児は大変です。双子育児って第三者からは「賑やかで楽しそう」「幸せそう」みたいな目で見られがちです。もちろんそうした側面はありますが、やっぱりそれ以上に大変なんです。
それを知らないまま双子育児に突入すると、「こんなはずじゃなかった」と周囲のイメージとのギャップに悩んでしまうので、最初から「何が起こるかわからない」くらいのマインドセットで臨まないと、つらくなってしまいます。
特に双子ママは妊娠中に周囲の人から「双子は育てられる人のところにしか来ない。あなたはできるから授かったのよ」と、呪いのような言葉をかけられがちです。だけど、人間の体は本来、1人の子どもを産んで育てるようにしかできていない。双子を妊娠することは、ある意味で異常事態なんです。だから自分だけでなんとかしようとせずに、少しは手を抜いたり、遠慮せずに周囲を頼ってほしい。先輩ママとして、それだけは言っておきたいですね。
あやか(鏡 彩圭)/双子育児インスタグラマー、Voicyパーソナリティ、イラストレーター
男女双子(小1)とその妹(4歳)を育てる3児のママ。研究開発職会社員からフリーランスに転身し、現在はInstagramやVoicyで双子育児情報などを発信しているほか、思考整理アドバイザー、SNS運用アドバイザーとしても活動している。
著書に、『子育てを劇的に変える魔法の考え方』(GalaxyBooks)、『双子妊娠レポまんが 双子出産への道:人間の限界に挑戦した37w6days』がある。
Instagram:https://www.instagram.com/ayakakagami/
Voicy:https://voicy.jp/channel/2739