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赤ちゃんや子どもの動作のひとつである「指しゃぶり」。子どもらしい、かわいい姿でもありますが、ママやパパにとっては気になる動作となっていることも多いかもしれません。「衛生的に心配」「将来の歯ならびに影響してしまうのでは?」という声も多く聞かれます。そんな不安を解消すべく、今回は小児科専門医の森戸やすみ先生に、赤ちゃんや子どもの指しゃぶりについて教えていただきました。
指しゃぶりは生後まもなく始まるというイメージがあるかもしれませんが、実は赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいるときから指しゃぶりをしています。妊娠中のエコー写真に、胎児が指をしゃぶっているような姿勢が写っているのを見たことがある方もいると思います。
この動作は、口をつけて吸う「吸てつ反射」というもので、おっぱいを吸うために人間に自然と備わった原始反射のひとつです。なので、おなかが空いていなくても口で何かを探したり、吸い付いたりする動作をします。大体、生後3カ月頃まで見られますが、その時期のあとも赤ちゃんは何かをくわえて吸う動作をします。口に物が入っていると安心するからで、これが指しゃぶりになっていることもあります。
通常では、いつのまにか指しゃぶりをやめている場合がほとんどです。3歳頃になると社会性が出てきて興味が広がり、友達と一緒に遊ぶことを楽しんだり、おもちゃで遊んだりして、自然と指しゃぶりは減っていくようです。
では、なぜ赤ちゃんは指しゃぶりをするのでしょうか。それは前述のように、何かをくわえて吸うことで安心感を得ることも一因でしょう。実際、私が勤務していたNICU(新生児集中治療室)では、赤ちゃんが痛みを感じるような採血などの処置をしたあとに、おしゃぶりをくわえさせていました。おしゃぶりをくわえさせた場合は、していない場合に比べて、赤ちゃんの心拍数が平常値に戻るまでの時間が短くなるという看護研究に基づいたものです。
ただ、指しゃぶりは安心感を得るために誰もが必ずやるものではなく、ほとんどやらない子もいます。指しゃぶりはしないけれど、市販のおしゃぶりやタオル、毛布などを離さないという子もいます。安心感を求めるものが、その子にとってはたまたま指であったり、おしゃぶりやタオルであったりするということです。
また、よく「さみしいから指しゃぶりをしているの?」と言われることもありますが、さみしいというよりは、手持ち無沙汰で退屈しているというほうが近いかもしれません。
第一に衛生面は気にしてあげてください。子どもはいろいろなものを触るので、手を洗っていない不潔な状態のまま指しゃぶりをすることは避けたいですね。必然的に感染症などのリスクが増えてしまいますので、特に手指を清潔に保ってあげるように気をつけてください。
流水と石鹸で手を洗うのが一番いいのですが、難しい場合にはアルコールで手指消毒をします。
※参考)正しい手洗い(手指衛生)の方法
https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/kansen/fusegu/tearai.html
また、同じ指ばかりをしゃぶるので、吸いだこができたり、皮膚に亀裂が入ってしまって傷ができ化膿してしまう場合もあります。化膿していて痛い状態でも指しゃぶりをやめられない場合もありますので、そのときには早めに皮膚科か小児科を受診してください。
よく、「歯ならびに影響するから指しゃぶりをやめさせたい」とおっしゃる保護者さんもいらっしゃいます。しかし、1日のうちのわずかな時間だけであれば、歯ならびに影響することはあまりないです。
日本小児歯科学会
でも、3歳頃までは指しゃぶりを禁止する必要はないと回答しています。少なくても3歳くらいまでは過剰な心配は必要ありません。
3歳くらいまでであれば、指しゃぶりを無理にやめさせる必要はないと思います。前述のように、ほとんどの子どもが自然としなくなるものです。ただ、3歳以上になってもやめない場合や、衛生的に気になる場合もありますよね。その場合は、強引にやめさせるのではなく、なぜ指しゃぶりをずっとしているとよくないのかということを話してみてください。
その頃であれば、大人が話していることを理解し始めるので「指しゃぶりをしていると、ばい菌がお口に入ってしまうかもしれないよ」など、子どもにわかりやすく話すことをおすすめします。また、指しゃぶりをしそうになっていたら、手を握ってあげるなどのコミュニケーションをとることもよいでしょう。
お子さんが好きなキャラクターやカッコいいデザインなどの絆創膏を、しゃぶる指に貼ることもおすすめしています。指をしゃぶってしまうと好きなキャラクターが見えなくなってしまうので、指しゃぶりが減るきっかけにもなります。ただ、寝ているときには無意識に指しゃぶりをしていることもあり、誤って絆創膏を飲みこんでしまうなどのリスクもあるので、十分に気をつけてください。
指しゃぶりをはじめ、育児に関する悩みなどがあるときには、インターネットやSNSで検索をすることが多いと思いますが、その情報ソースには十分に気をつけてほしいです。
指しゃぶりに関して、
日本小児歯科学会
のホームページには「3歳頃までは特に禁止する必要がない」と載っています。しかし、SNSでは「原因は愛情不足」「今すぐにやめさせないと!」という情報が飛び交っていたりします。目の前の情報をすぐに鵜呑みにする前に、その情報は信頼できる人物や学会、機関が発信しているのかなどを確認するようにすると、惑わされることも少なくなるのではないでしょうか。
育児に関しては、学会や医療機関、厚生労働省などが発信している情報を得ることをおすすめします。ぜひ、正しい情報を得てくださいね。
森戸 やすみ/小児科医
一般小児科、NICU勤務を経て、2020年より、東京都台東区谷中の「どうかん山こどもクリニック」に勤務。『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』(内外出版社)をはじめ、著書・監修本多数。